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新人webデザイナーで転職しがちなワタシの「素直に生きる人生をおくりたい」そんなワタシのブログです。まっすぐに思ったことや得たことをお届けできるようにがんばります。

雨の日の恋

会う時は雨がおおかった

 

 

はじめて出会った時も

アナタは紅い傘を持ち「はいりますか?」と

薄い右肩に染みを作りながら言った。

そして5分でつく駅で私を見送りながら

「また、あえますか?」と恥ずかしげも無く言った。

「ええ、いつでも。」なぜか私の方がうつむいて答えた

顔を上げても雨はさめざめと降り続いていて

向こうのそらまでもどんよりと霞んでいた。

 

 

さいごに彼女を見た時

いや、正確には

彼女の面影をのこした本に最後にであったときにも雨が嵐のように降っていて

私はその雨を逃げるために入った出張先のニューヨークの本屋で

気づかれなくてもいいのだと言ってるかのような

ささやかな文字と装飾も無い表紙の本に

間違いない彼女の名前が描かれたそれを見つけた。

 

その瞬間

ほんの微かな悲鳴が喉元から漏れた。

表紙をみながら 

ささやきあっていた女同士のカップルは

私の驚く顔を見て、この作者をしってるのかと

優しく微笑みながら聞いた。

「ええ 彼女は 多くの読者では無いけれど

 とても深く愛されていた作者だったわ」

 

 

あたしはそう答える以外、術が無かった。

 

あと一度でも瞬きをした瞬間に

涙はこらえられずに流れるだろう

あと一言でも声を発せば

呼吸が出来なくなるほどの泣き声が出るだろう

 

私たちが出会ったあの場所から何千キロも離れた

こんな場所で

私たちが出会ったあの日からもう3年もたった

こんな雨の日に

私たちはまたであってしまった

もう彼女は居ないのに

もう私たちは違うのに

必然でも運命でもない私たちはまたこうして

あなたのいない今出会ってしまった

私だけを取り残して 

あたしにだけ向けられた面影に。

 

 

「シャンパンを片手にもって

微笑むあなたがすきだ

わずかに 憂いの匂いを連れてくる

あなたの瞳がすきだ

熱帯雨林のように たっぷりと水分を含んだ

あなたの黒い髪も

ひんやりと静かな肌も

雨の日ばかり会うわねといった

あなたの唇も

わたしは死に行くとき

確かに思い出すだろう

幸せなあなたとの時間だけを連れて

 

まちがいでも

正解でも

わたしたちは消えない。」

 

それを最後の言葉で迎えた彼女の

最後の面影を

わたしはまた思い出し

瞬きをした。

 

ガラスの向こうでは

もう雨は止んでいた

それなのに

あの日のように向こうの空は 

霞んでしまって見えなかった。