土曜は酔っぱらい。
牛肉が圧力鍋の中、赤黒くぐらぐらと煮詰まっていく
部屋中にトマトの酸味と赤ワインの匂いが染み付いている
まだ寒い三月、窓を開けばどんやりと空が垂れる。
換気扇の静かな息
蛇口からの水滴
鍋底だらだらに溶けたタマネギ
ひかれたベットの中で
くすくすと笑い合う。
わたしたちはほんとうにだめだね
とぷんと日が暮れるまで
くすくすと笑い合う。
牛肉が圧力鍋の中、赤黒くぐらぐらと煮詰まっていく
部屋中にトマトの酸味と赤ワインの匂いが染み付いている
彼女の背中からはいつもおいしそうな匂いがする。
彼女の唇からはいつもおいしそうな言葉があふれる。
指先からも首筋からも腰のくびれからも
彼女からはいつもおいしそうな何かがにじみ出てる。
何も無い土曜日はその根源を探そうと試みる。
私たちはほんとうにだめね
くすくすと笑い合いながら
彼女はこくこくとワインを流し込む
少し開いた口からのぞく
滑る赤い舌は
鍋の中で煮詰まり続けるソレににていた